審査手続

出願された発明が特許されるためには、前掲の登録要件を満たさねばならない。これを判断する作業が「審査」である。特許出願が方式的な要件を満たしているかを審査する方式審査が特許庁長官によって行われ(特許法17条3項)、方式審査を通過した出願について登録要件を満たすかどうかを審査する実体審査が行われる。実体審査には、各種の技術的・法律的知識が要求されるため、特に資格を定められた特許庁審査官によって行われる(特許法47条)。

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    審査主義

    特許制度において、権利成立のために実体審査を要するか否かは、国によって考え方が異なる。実体審査を経た後に特許登録を行うのが「審査主義」である。審査主義をとることには、成立した権利が特許要件を満たしていることが保障された安定した権利であるという大きな利点がある一方、権利成立までに時間がかかり、多大な行政コストを要するという欠点もある。しかしながら裁判による事後調停、第三者監視負担を勘案すると社会全体のコストとしては無審査主義に比べ遙かに低コストとなる。

    「特許」という名称から特に許可を得るものと考えがちであるが、特許は審査を経て登録するものであって、許可するものではない。したがって、早口言葉にある「東京特許許可局」なる部署は、現在・過去において特許庁に存在しない。

    ちなみに、実用新案、意匠、商標については、「実用新案登録」、「意匠登録」、「商標登録」と言うが、「特許登録」とは言わない。これらと同列に扱われる用法は「特許」である(「特許」自体が「登録」であるため)。ただし、「特許権設定登録」は用法として正しい。

    現在、ほとんどの国が特許について審査主義を採用している一方で、日本の実用新案のように、特許とは別の無審査登録の制度を採用し又は補完的に有している国も存在する。

    無審査主義では、早期に権利が発生するという出願人にとってのメリットはあるが、第三者への権利行使に際しては自らの権利が新規性・進歩性を具備し、有効であることの立証が不可欠となる。なお、日本の実用新案では、権利行使に当たっては所定の技術評価書を提示し(実用新案法29条の2)、権利行使後にその実用新案権が無効にされた場合には、相手方に与えた損害を賠償しなければならない旨の規定が設けられている(実用新案法29条の3)。

    出願審査請求制度

    日本では、特許の審査を受けるためには、単に特許出願を行うだけでなく、出願審査の請求を行う必要がある(特許法48条の2)。つまり、全ての出願が自動的に審査されるわけではない。

    このような制度が設けられたのは、特許出願から審査までの間の技術的・経済的環境の変化などによって特許化の必要がなくなる出願があるためである。また、特許出願は、原則として、出願後1年6月で自動的に公開され(特許法64条)、当該特許出願に開示された発明や、それにより自明な発明が後に特許されることを防ぐことができる(特許法29条、39条)ため、競合他社等の特許取得を防止するには十分である。このような消極的な出願はいわゆる防衛出願といわれる。

    出願審査の請求は、出願から3年以内にしなければならない(特許法48条の3)。また、請求は出願人のみならず何人もすることができる。

    なお、特許に携わる人は、出願審査請求を単に「審査請求」ということが多いが、一般的には、「審査請求」といった場合は、行政不服審査法に基づく請求(行政不服審査法3条、5条等)をさすことが多いので、注意しなければならない。

    手続の実際

    出願審査の請求を受けて、審査官が審査を行う。そして、特許できない理由が発見された場合には、拒絶の理由を通知して(「拒絶理由通知」という)、一定の期間を指定し、出願人に意見を述べたり出願内容を補正する機会を与える(特許法50条、17条の2)。具体的な拒絶理由は特許法49条各号に列挙されており、これ以外の理由で拒絶理由・拒絶査定を受けることはない。審査官の恣意を防ぐためである。

    拒絶理由に対して、意見等が提出されない場合や、提出された意見等を勘案しても拒絶理由が解消されなかった場合には、審査官は「拒絶をすべき旨の査定」(通称「拒絶査定」、特許法49条柱書)を行う。したがって、反論の機会もなく、突然に拒絶査定がされることはない。

    また、拒絶理由が発見されなかったり解消された場合には、「特許をすべき旨の査定」(「特許査定」特許法51条)が行われる。

    実際には、審査請求された出願のほとんどに対して拒絶理由通知が発せられており、それに対する応答(意見と補正の内容)が特許の成否を分けることが少なくない。拒絶理由通知に対して、出願人がとる対応として、意見書(特許法50条)や手続補正書(特許法17条の2)の提出、出願分割(特許法44条)、出願変更(特許法46条)、当該出願を基礎とする国内優先権の主張を伴った新たな出願(特許法41条)、出願の放棄や取り下げなどがある。分割出願は、単一性違反(特許法37条)の拒絶理由を解消するために有効である。

    出願する上で、重要となるのは、多くの観点からの請求項を含む特許請求の範囲や、上位概念的な請求項から実施例に対応した請求項まで多段階にわたる特許請求の範囲を、出願時に作成しておくことである。このような幅の広いクレームを作成することによって、審査上の進歩性の判断ラインを見極め、有効な特許を取得することができる。

    また、審査請求時に、自社や他社の製品動向に沿って特許請求の範囲を補正することも有効である。ただし、補正にあたっては、新規事項の追加にあたることがないように留意が必要である。

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